会見リポート
2025年05月22日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「戦後80年を問う」(7) ジェラルド・カーティス コロンビア大学名誉教授
会見メモ
戦後、米国主導で築かれてきた国際秩序が危機的状況にある。コロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティスさんは、「戦後はいつ終わったのか。それは2025年1月20日、ドナルド・トランプが米大統領に就任した日。日本の戦後だけでなく世界の戦後も終わった」と切り出し、変容する米国と日本はどう向き合うべきなのか、関税交渉における日本の対応をどう見ているのか、日米関係の在り方や日本が進むべき道などについて話した。
司会 乾正人 日本記者クラブ企画委員(産経新聞社)
会見リポート
1月20日、戦後は終わった
大石 信行 (日本経済新聞社 上席プロデューサー)
終戦80年。米コロンビア大学名誉教授、ジェラルド・カーティス氏は「戦後は終わった」、しかもその日は特定できるという。その日とは、ドナルド・トランプ氏が再び米大統領に就任した2025年1月20日である。日本だけでなく、世界の「戦後」に終止符が打たれた。
これまで米国は民主主義、安全保障、そしてルールに基づく国際秩序の柱だった。しかしトランプ大統領は、保守主義者というより、こうした秩序を破壊する「毛沢東のような革命家」だとカーティス氏は語る。ディールを最重視し、「結果が良ければプロセスはどうでもいい」という発想は、民主主義の根幹を脅かす。まるで米国版の文化大革命のようだとも。
一時的だと楽観視する声もあるが、カーティス氏は「これは米国の“ニューノーマル”だ」と断言する。
日本は、その変化にどう向き合うべきか。カーティス氏は「戦略と戦術を分けて考える」ことの重要性を説く。短期的な戦術は時間稼ぎ。その点、石破政権は評価できるという。
しかし、長期的な戦略は依然として欠けている。トランプ文化大革命が進むなか、従来の「対応型」ではもはや通用しない。米国のリーダーシップが揺らぐ今こそ、日本はミドルパワーとしてのソフト力を発揮し、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)などの主導権を握るべきだと語る。
とはいえ、半世紀にわたり日本政治を見つめてきたカーティス氏は、将来を見据えたビジョンを持ち、リーダーシップを発揮する政治家が見当たらない現状を憂う。かつては政策通の官僚出身議員と党人派が緊張感を持って政権を支え合っていたが、その構図も今は崩れている。
では、この危機的状況をどう打開するのか——。カーティス氏は明確な処方箋を示さなかった。「リーダーシップが欠ける」と今の政治家を非難しても危機は乗り越えられない。政治家を選んだのは国民であり、私たちメディアにも大いなる責任があるのだから。
ゲスト / Guest
-
ジェラルド・カーティス / Gerald. L. Curtis
コロンビア大学名誉教授 / Professor Emeritus of Political Science at Columbia University
研究テーマ:戦後80年を問う
研究会回数:7