会見リポート
2025年05月26日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「トランプ2.0」(10) 篠田英朗・東京外国語大学教授
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会見リポート
トランプ氏、時代転換象徴
平田 弓月 (共同通信社経済部次長)
トランプ米大統領と言えば、世界を敵対視する高関税政策、思いつきのようにも見える外交政策から理解や予測が不能というイメージも強い。だが歴史をひもとくと全く違う景色が見えてくるという。国際政治理論に詳しい篠田英朗氏がそんな意欲的な試みを披露した。「トランプ大統領を米国の政治思想の中に埋め込む作業」を通じ、戦略的、理論的な枠組みで分析すると、時代の転換を象徴した存在に見えるというのだ。
篠田氏によると、トランプ氏は、19世紀の米国を偉大と考え、当時の「アメリカン・システム」のファンだと35年前から公言、20世紀の米国に「意図的に挑戦している」。アメリカン・システムは米国の製造業を育てることが国力の源泉と信じ、高い関税を維持し、優良な製造業に補助金を入れるという鮮明な保護主義を指す。圧倒的な経済成長を背景に「自信に満ちあふれて関税政策を遂行していた」時代の政策だ。
その後、20世紀の米国は、自由貿易維持が自国の利益にかなうとの行動原理で来たが「特別な責任を負って、財政・貿易赤字が史上最高を更新し続けても、気にせずに世界の国際秩序の守護者として生きる考え方は21世紀にはもう不可能と米大統領が言い始めたとすれば、そういう時代も来るのではないか」。「明白な運命論(Manifest・Destiny)」を色濃く受け継ぎ、大陸系地政学の考え方も基盤に、米国の影響圏・勢力圏を確立する作業に専心し、カナダやグリーンランドへの領土的野心を隠さないとみる。
20世紀的な米国には衰退の気配が漂い「大きなほころびがいっぱい出ている。かなり米国も疲れているというのが大きなポイント」と分析。トランプ氏を擁護するわけではないとしつつ「19世紀がまた出てくるという世界観もあながち分からないでもない。破綻したものとはいえない」という見方が壮大で、興味深い。
ゲスト / Guest
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篠田英朗 / Hideaki SHINODA
東京外国語大学教授 / professor, Tokyo University of Foreign Studies
研究テーマ:トランプ2.0
研究会回数:10